10年間を振り返る

10年前は23歳。実はあまり覚えていない。もう今みたいな暮らしを50年くらい前から続けてきたような感覚。そしてあと、50年くらいこの生活が続いてしまいそうな不安や安心。

10年前の私は、おそらく引きこもりであった。友人もいない、学歴もない、働かないしで、家族には迷惑がられていた。私よりも家族の方が、私の存在を疎んでいたかもしれない。死にたかった。死ぬことばかり考えていた。父親が怖かった。ただただ生きていることが申し訳なかった。
毎日小説を読んで現実逃避をした。たまに出掛けて写真を撮って過ごしていた。引きこもり時代にフィルムカメラに出会って、私は外に出るようになった。今はもう絶版のカメラ雑誌「カメラ日和」。私が唯一出掛ける本屋さんで見つけた。フィルムカメラと私の出会い。とても好きな雑誌だった。こんな写真が撮りたいと思って9,000円でNikonFEを買った。その後もいろんな一眼レフや高いカメラを買ったけれど、FEが今も1番のお気に入り。

たぶん、愛犬が亡くなったのも10年ほど前。私の家族であり唯一の友人でもあった。彼が亡くなって、私は家を出ようと思った。
私も死んでしまってもいいかな。でも死ぬにしても何かしてから死のう。全部ダメになったら死ねばいい。決心するのにずいぶん時間がかかった。
私はひとりで生きていくための段取りを考えた。経験値が皆無だったその時の私がひとりで生きていくのは、かなりハードルが高い。
家族に相談して、予備校へ行かせてもらった。翌年から奨学金を借りながら専門学校へ通った。学校は実家から遠かったから、とても安い1Kのアパートでひとり暮らしを始めた。実は、家を出るためにあえて遠い学校を選んだ。
友人もできたし、バイトも経験した。苦しいことも辛いこともたくさんあったけれど、地獄の引きこもり時代に比べたらなんてことない。
無事に卒業して国家資格を取得。ひとりで生きていくための段取りは順調だった。けれど、友人ができると誰かと繋がっている安心や、ひとりの寂しさを実感するようになった。もうひとりは嫌だ。

奨学金を返済して2年ほど前に、知り合いもいない今住んでいる土地に引っ越してきた。離れても遊ぼうね、連絡してね。と言って別れた友人たちとはことごとく疎遠になった。ひとりは寂しい。
その後、友達募集アプリから唯一友人になれた人と、1年の友人期間を経て恋人になった。今プライベートで気軽に会える人なんて彼くらいだ。

今年は本当に死にたくなるような出来事にも遭遇した。今が正解とか不正解とか、そんなことはわからない。けれど、会いたい人もいるし、会いたいと言ってくれる人もいる。

振り返ってみたら、この10年間で私はだいぶ変わったようだ。ずいぶん遠回りをしてしまったが、私にはこのペースがきっと丁度よかったのだ。
苦しいことも辛いこともたくさんあるし、幸せとかそうじゃないとか、そういうのはよくわからない。私は私のことが嫌いだけれど、今までの私と比べると今の自分が1番好きだ。


これからの10年は、もしかしたらあまり変化はないかもしれない。
10年後もこの人と一緒にいたいな。



諦めたらそこで試合終了なんですって。