漂泊する声

「私は川を流れるアイスの棒だ。流れに任せて漂うだけだ。行きつく先がどこであっても。誰かが私を拾わない限り、私を繋ぎ止めるものは何もない」
むかし読んだ小説に、正確ではないけれど、こういったことが書いてあった。その本を読んだ当時、おそらく10代後半くらい。私はそのアイスの棒を自由だと感じた。何者にも左右されず、ふらふらと漂って、いつかは大海原まで流れ着く。そこからもしかしたらまた陸へ漂着するかもしれない。それは誰にも、アイスの棒自身にもわからない。それがすごく自由だと思ってた。

私は今、川を流れるアイスの棒だ。私を繋ぎ止めるものは何もないし、仕事を辞めた自分がどこへ辿り着くのかもわからない。誰も気にも留めない。大海原まで流れ着いてしまったらどうしよう。こんなに心細いことはない。
あの小説のアイスの棒は寂しかったんじゃないかと、今なら思える。私はこれからどこへ行ってしまうのだろう。大海原へ流れてしまう前に誰か繋ぎ止めてくれないか。


人生には期待しないのが最大の防御。

多くを望まないこと。

毎日なにかを頑張ること。

逃げ道を用意すること。

こうして思いを綴れることも救いのひとつだ。