読書メモ

11-12月に読んだ本。
自宅待機してたわりに読めてない。ネタバレ配慮ないです。

ノースライト

ノースライト

「父親自信が抱える苦しみのほうが、自分への愛情よりも重かった。永久に傾いたままのその天秤を、ことあるごとに見つめることになる。」
なんという本を読んでしまったのだ。
ようやっと横山さんのノースライトを読了した。ハードカバーしかなくて文庫化を待ちながら読むのを躊躇っていた。けれど文庫化を待てずに手を出した。よかった。本当に、この人の小説はハズレがない。いつもは警察側とか犯罪者側とかからの話が多いから、建築系も読めるのかと心配だった。杞憂だったけれど。横山さんは知識のない人にもわかるように充分に補足しながら文章を書いてくれている。それだけに内容が深い。上面だけではなく、深く掘り下げられた話を読んでいるのがわかる。
あと、なんといっても横山さんの小説の魅力は人間味だ。登場するどの人もしっかり確立されている。そこに立っている人物像。人間模様。主人公の感情だけじゃなくて、周りの人たちの機微も丁寧に描いている。だから横山さんの小説は好きなのだ。ちゃんと世界がある。ミステリの内容も秀逸だけれど、複雑な人間関係、それぞれの感情がより魅力的にさせてるんだと思う。だから読み終わったあとはしばらく立ち直れない。登場人物たちに、これから素晴らしい日常が訪れることを祈る。
内容についての感想は。なんて誠実な人たちばかりか。岡嶋所長の一創君への思いが痛いくらい伝わった。青瀬さんはなんて男気のある人なんだ。吉野さんは自分のことを不誠実だと語ったけれど、こんなにも誠実な人もいないのではないか。父親の思いを汲むために、こんな行動を起こせる息子なんて。
家族の話だったな。家族の愛情の話だった。読みながら親しくなっていった人たちが悲しむ姿や、ましてや亡くなるなんて。家族や周りの人たちの悲しみが伝わる。感動した。分厚いし、馴染みのない話だしで取っ付きにくいけれど、読めてよかった。
ついこの間NHKが映像化していた。私は好きな作品の映像化は極力見ないけれど。
新作待ってます。

溺レる (文春文庫)

溺レる (文春文庫)

「生まれてから今までどれくらいのことを後悔しましたか」
ふわふわしてて、あんまり内容覚えてない。

ゴースト (朝日文庫)

ゴースト (朝日文庫)

「辛いことばかり思い出されるのではない、ときどき鮮やかによみがえるのは、誰かに親切にされた思い出なのだか、それがまた思い出になると辛かったことよりさらに深く傷を抉る」
「それはわたしが泣いたのではなくて、なにかがわたしの中にそっと入り込んできて涙を流させたかのようだった」
ゴーストに関する短編集。怖さはない。いつの間にかそこにあったくらいの気軽いゴースト。
幽霊とも普通に会話ができたらいいのにね。

眠れない夜は体を脱いで (中公文庫)

眠れない夜は体を脱いで (中公文庫)

平坦で起伏のない短編集だったけれど、すらすら読めたし、久しぶりにこういう青春っぽい話を読んだ気がする。内容は日常系だし、いわゆる直球な青春ではなくて、この本を色で表したら明るい青色だなって思った。
とても描写がうまい。そんなさ、「ただ楽しかった一日の余韻が、骨を暖める」なんて表現できる?素晴らしすぎる。
ただただいい人しか出てこなかった。個人的には「鮮やかな熱病」の中でカエルの帽子を創ってる妻がなんてチャーミングで可愛らしい人なんだろうと思った。あんまり登場してないけど。読み心地爽やか。

熱帯魚 (文春文庫)

熱帯魚 (文春文庫)

節々でなるほどなあ、と思いながら読んだけど、読み終わっても何も残らなかった。登場人物がほどよくイカれてた。けれど人間なんてこんなものか、なんて思ったり。

魔性の子 十二国記 0 (新潮文庫)

魔性の子 十二国記 0 (新潮文庫)

十二国記シリーズらしいけれど、単品でも読めるということで読んでみた。ファンタジーがあまり好きじゃないから十二国記は読んでない。でもこれもファンタジーだったかな。ホラーと思って読んでたけれど。怖い怖いとあちこちのレビューで書かれてたから期待していた。けれど同著者のゴーストハントの方が断然怖い。ホラー要素はあまりなかったんじゃないかな。不気味というか世にも奇妙な要素はあったけれど。最初から最後まで心霊的なものは感じなかった。でもそこは小野不由美。文章がスラスラ読める。情景が頭に浮かぶ。感情が伝わる。私はずっと後藤先生目線だった。帰る場所はないし特別な人間なんていない。広瀬は最後に自分のエゴに目を向けて独白したから、そこは読んでて気持ちがよかった。自分好きの綺麗事ばかりだなって思ってたから。やっとか、こいつって。人間はそれだけで汚い生き物なんだよ。
でも容赦なかったなあ。築城とか、悪い奴じゃないと思ってたけど。まさか後藤先生もなのか。
まったく普通の何が悪いんだ。