あんまり酷い仕打ちを受けて、その結果死んでしまったのなら、死者には呪う権利がある。呪う権利があるのは死んでしまった人だけだ。恨みを晴らすまで成仏することなんてない。復讐は自分でしたいでしょう。でも死んでしまったら人を呪うことも復讐することもできない。終わりだもの。

死んだらもう酷い仕打ちを受けることはなくなる。怖くて辛くて苦しい想いをすることもなくなる。もう過去と明日を呪いながら眠ることもない。全部終わりだもの。それは安心でしょう。終わりがなければ安心できない。痛くて苦しくて終わる。死ぬこと。

でも、死んでしまっては経験できない楽しいことがあるかもしれない。生きていればいつか、かつてないほどの幸福を味わえるかも知れない。結果どちらがよいのかわからない。全部ゼロになるとはこういうことなのか。

しかし幸福など訪れないかもしれない。不安や恐怖はこんなにも身近なのに。

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